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【局所麻酔薬中毒の対応】研修医が押さえる症状と最初にやること

局所麻酔薬中毒の対応を表すアイキャッチ画像 術中の管理と危機対応

硬膜外麻酔や神経ブロックで局所麻酔薬を投与したあと、患者が「口のまわりがしびれる」と言い出す。あるいは全身麻酔中に、理由の分からない不整脈や血圧低下が起きる。局所麻酔薬中毒は頻度こそ高くありませんが、気づくのが遅れると循環虚脱に至ることがある合併症です。

こんな場面はありませんか
  • 局所麻酔薬を投与するのが怖い
  • 中毒の症状を言える自信がない
  • 疑ったときの手順があいまい
  • 脂肪乳剤の置き場所を知らない

大事なのは、起こさない工夫と、起きたときにすぐ動ける準備の両方です。局所麻酔薬を投与するときは、いつでも血管内投与の可能性があると考えてください。

局所麻酔薬の投与に迷う研修医のアイコン
研修医

吸引して血液が引けなかったので、もう安心して投与していいですか。

現役麻酔科医のアイコン
麻酔科医

引けなかったからといって、血管内に入っていないとはかぎりません。少しずつ投与して、患者の様子を見ながら進めてくださいね。

この記事では、日本麻酔科学会の「局所麻酔薬中毒への対応プラクティカルガイド」をもとに、予防、準備、症状、最初にやること、脂肪乳剤の使いどころを整理します。

局所麻酔薬中毒が起こる場面

局所麻酔薬中毒が起こる場面を表すバナー画像

局所麻酔薬中毒は、局所麻酔薬の血中濃度が中毒域を超えたときに起こります。血管内に誤って投与した場合だけでなく、組織からゆっくり吸収されて起こることもあります。プラクティカルガイドでは、局所麻酔薬を用いるあらゆる場面で起こりうるとされています(出典:日本麻酔科学会 局所麻酔薬中毒への対応プラクティカルガイド)。硬膜外麻酔でも神経ブロックでも、局所麻酔薬を使うかぎり起こりうる合併症です。

神経ブロックが増えている背景

抗血栓薬を使う患者が増え、硬膜外麻酔の代わりに末梢神経ブロックが選ばれる機会が増えています。

プラクティカルガイドは、超音波ガイド下の神経ブロックが麻酔科医だけでなく整形外科医の間でも広く行われるようになったと述べています(出典:日本麻酔科学会 局所麻酔薬中毒への対応プラクティカルガイド)。神経ブロックは、硬膜外麻酔より局所麻酔薬の量が多くなりやすい手技です。

  • 抗血栓薬を使う患者の増加
  • 超音波ガイド下ブロックの普及
  • 局所麻酔薬の量が多くなりやすい

神経ブロックが身近になったぶん、中毒への備えも全員に必要になりました。神経ブロックを含む術後鎮痛の組み立ては【術後鎮痛の方法】研修医が迷う決め方と組み合わせの考え方にまとめています。末梢神経ブロックそのものについては、【末梢神経ブロックとは】硬膜外麻酔と何が違いどんなときに選ぶのかをご覧ください。

頻度はまれでも重い

頻度は高くありません。

プラクティカルガイドによると、局所麻酔薬中毒の頻度は定義や手技によって約1万例に1例から500例に1例と幅があり、正確な数値は分かっていません。それでも、まれに循環虚脱に至る重い例があるとされています(出典:日本麻酔科学会 局所麻酔薬中毒への対応プラクティカルガイド)。

めったに起きないからこそ、起きたときに慌てないための準備が要ります。

血管内投与と組織からの吸収

原因は、大きく2つに分けられます。

1つは、動脈や静脈に誤って直接投与してしまうことです。もう1つは、組織に投与した局所麻酔薬がゆっくり吸収されて血中濃度が上がることです(出典:日本麻酔科学会 局所麻酔薬中毒への対応プラクティカルガイド)。硬膜外麻酔では血管内への誤った投与の危険が、神経ブロックでは量の多さによる吸収の危険が高くなります。

  • 血管内への誤った直接投与
  • 組織からのゆっくりした吸収
  • 持続投与での蓄積

すぐに起きる中毒と、時間がたってから起きる中毒があります。

起こさないための予防

局所麻酔薬中毒を起こさないための予防を表すバナー画像

局所麻酔薬中毒は、まず起こさないことが大切です。プラクティカルガイドも、重大な障害を引き起こす可能性のある合併症であり、まず予防に努めるべきだとしています(出典:日本麻酔科学会 局所麻酔薬中毒への対応プラクティカルガイド)。予防の柱は、量を減らすこと、少しずつ投与すること、血管内に入っていないかを確かめることです。どの予防策も完全ではないので、重ねて使います。

投与する量を減らす

いちばんの予防は、投与する量を減らすことです。

プラクティカルガイドは、製薬会社が示す最大耐容量は患者の状態によって変わるため、体重あたりの最大量だけを頼りにせず、それより少ない量を投与すべきだとしています。アシドーシス、乳児、肝障害、心不全では中毒が起こりやすくなります(出典:日本麻酔科学会 局所麻酔薬中毒への対応プラクティカルガイド)。

  • 最大耐容量より少なく
  • アシドーシスや心不全
  • 乳児や肝障害のある患者

どの患者でも、最大耐容量いっぱいまで使ってよいわけではありません。

少しずつ分割して投与する

一度に全量を投与せず、少しずつ分けて投与します。

プラクティカルガイドでは、少量ずつ分割して投与し、そのたびに時間をおいて観察することが勧められています。速く、強い圧で一気に注入すると、血管内に誤って投与する可能性が高まり、神経損傷の原因にもなります(出典:日本麻酔科学会 局所麻酔薬中毒への対応プラクティカルガイド)。

  • 少量ずつ分けて投与する
  • 投与のたびに様子を見る
  • 強い圧で一気に注入しない

少しずつ投与すれば、症状が出ても量が少ないうちに気づけます。

吸引して血液が引けないかを確かめる

吸引できる状況であれば、吸引してから局所麻酔薬を投与します。

筆者は、硬膜外カテーテルを留置したあとに必ず吸引するようにしています。実際に、そこで血液が引けることがあります。これを確かめずに投与すれば、そのまま血管内投与になるということです。

ただしプラクティカルガイドは、吸引で血液が引けなくても血管内投与は起こりうるとしています。超音波で針先を見ていても、完全には防げません(出典:日本麻酔科学会 局所麻酔薬中毒への対応プラクティカルガイド)。

  • 吸引してから投与する
  • 血液が引けたら投与しない
  • 引けなくても安心しない

血管内投与の可能性は、いつもリスクとして認識しておいてください。

薬の選び方と試験投与

局所麻酔薬の種類や投与の仕方によっても、リスクは変えられます。

プラクティカルガイドは、多くの量を使う場合には、ブピバカインよりもロピバカインやレボブピバカインのほうが中毒症状が出にくく望ましいとしています。また、アドレナリンを添加した少量の局所麻酔薬を試験的に投与し、心拍数や血圧の上昇から血管内投与に気づく方法もあります。ただし、β遮断薬を内服している患者や高齢者、鎮静中の患者では気づけないことがあります(出典:日本麻酔科学会 局所麻酔薬中毒への対応プラクティカルガイド)。

試験投与で何も起きなくても、それで安全が保証されるわけではありません。硬膜外麻酔でのテストドーズの見方は【硬膜外麻酔の合併症】研修医が知りたい硬膜穿刺と血管内投与の防ぎ方で詳しく解説しました。

投与の前に整える準備

局所麻酔薬の投与前に整える準備を表すバナー画像

局所麻酔薬中毒が起きてから道具を探していては、間に合いません。プラクティカルガイドは、区域麻酔を行うときにすぐ対応できる準備を整え、複数の医療スタッフがいる環境で行うよう求めています。体外循環ができるいちばん近い施設を把握しておくことも挙げられています(出典:日本麻酔科学会 局所麻酔薬中毒への対応プラクティカルガイド)。投与する前に、起きたときの道具がそろっているかを確かめます。

モニターと静脈路

まず、モニターと静脈路です。

プラクティカルガイドでは、日本麻酔科学会のモニター指針に準じてモニタリングを行い、心電図とパルスオキシメータを装着し、血圧は原則として5分間隔で測定し、静脈路を確保しておくこととされています(出典:日本麻酔科学会 局所麻酔薬中毒への対応プラクティカルガイド)。モニターの見方は【麻酔のモニターの見方】研修医が最初に押さえる数値と波形にまとめました。

  • 心電図とパルスオキシメータ
  • 原則5分間隔の血圧測定
  • 静脈路の確保

局所麻酔薬を投与するときも、全身麻酔と同じように監視します。

気道確保と痙攣への備え

次に、呼吸と痙攣への備えです。

酸素投与と気道確保がすぐにできるよう、バッグとマスク、喉頭鏡や気管チューブを手元に用意しておきます。痙攣に対する薬として、ミダゾラムやジアゼパムなどを準備しておくことも求められています(出典:日本麻酔科学会 局所麻酔薬中毒への対応プラクティカルガイド)。マスク換気は【マスク換気のコツ】研修医が押さえる持ち方と見直す順番に書きました。

  • 酸素とバッグとマスク
  • 喉頭鏡と気管チューブ
  • 痙攣に対する薬

呼吸が止まっても、すぐに換気できる状態で投与します。

脂肪乳剤の置き場所を知る

研修医にいちばん知っておいてほしいのが、脂肪乳剤の置き場所です。

プラクティカルガイドは、局所麻酔薬を使う施設では薬局に20%脂肪乳剤を常備し、手術室や分娩室のように使う頻度の高い部署にも、すぐ使えるよう常備することとしています(出典:日本麻酔科学会 局所麻酔薬中毒への対応プラクティカルガイド)。筆者も研修医には、置き場所は知っておかなければいけないと伝えています。

  • 薬局に常備されているか
  • 手術室にも置いてあるか
  • 自分の施設ではどこにあるか

いざというときに置き場所を探すのでは、間に合いません。

気づくための症状

局所麻酔薬中毒に気づくための症状を表すバナー画像

局所麻酔薬中毒は、局所麻酔薬を使ったあとに現れる症状から診断します。典型的には、中枢神経の症状が先に出て、心血管の症状が続きます。ただし、その順番どおりに進まない例も少なくないのが、この合併症の難しいところです(出典:日本麻酔科学会 局所麻酔薬中毒への対応プラクティカルガイド)。症状が順番どおりに出るとはかぎりません。

中枢神経の症状

最初に出やすいのは、中枢神経の症状です。

プラクティカルガイドには、舌や口唇のしびれ、金属のような味、多弁、呂律が回らない、興奮、めまい、見え方や聞こえ方の異常、ふらつき、痙攣などが挙げられています。その後、せん妄、意識消失、呼吸停止へと進むことがあります(出典:日本麻酔科学会 局所麻酔薬中毒への対応プラクティカルガイド)。

  • 舌や口唇のしびれ
  • 金属のような味
  • 多弁や呂律が回らない
  • 痙攣から意識消失

患者が口のまわりのしびれを訴えたら、まず局所麻酔薬中毒を疑ってください。

心血管の症状

中枢神経の症状に続いて、心血管の症状が現れます。

初期には高血圧、頻脈、心室性期外収縮が起こり、その後、徐脈、伝導障害、低血圧、循環虚脱、心静止へと進むことがあります。心電図ではPR時間の延長やQRS幅の増大が特徴的とされています。血管内に直接投与した場合は、神経の症状がないまま循環虚脱に至ることもあります(出典:日本麻酔科学会 局所麻酔薬中毒への対応プラクティカルガイド)。

  • 初期の高血圧や頻脈
  • 徐脈や伝導障害
  • PR延長やQRS幅の増大

神経の症状がなくても、循環が崩れることがあります。

症状が出るまでの時間

症状が出るまでの時間は、さまざまです。

プラクティカルガイドによると、半数の症例では投与後50秒以内、4分の3の症例では5分以内に症状が現れます。一方で、組織からの吸収による遅れた発症もあり、持続投与では開始から数日後に起こることもあります。そのため、大量に使った場合は少なくとも30分間は観察が必要とされています(出典:日本麻酔科学会 局所麻酔薬中毒への対応プラクティカルガイド)。

  • 半数は50秒以内
  • 4分の3は5分以内
  • 大量に使ったら少なくとも30分は観察

投与が終わったあとも、しばらくは目を離さないでください。

全身麻酔中は気づきにくい

麻酔科医がとくに気をつけたいのが、全身麻酔中に行う神経ブロックです。

プラクティカルガイドは、先駆症状が出る症例は16%しかなく、41%の症例では症状の出方が遅れたり、神経の症状がないまま循環の症状が出たりすると述べています。全身麻酔下や深い鎮静下では、発見が遅れることにも注意が必要です(出典:日本麻酔科学会 局所麻酔薬中毒への対応プラクティカルガイド)。

全身麻酔中の患者は、しびれを訴えることができません。頼りになるのは、心電図と血圧の変化です。

  • 先駆症状が出るのは16%だけ
  • 41%は非典型的な出方
  • 全身麻酔中は訴えが聞けない

全身麻酔中に原因のはっきりしない不整脈や血圧低下が起きたら、局所麻酔薬中毒も候補に入れます。

疑ったときに最初にやること

局所麻酔薬中毒を疑ったときに最初にやることを表すバナー画像

局所麻酔薬中毒を疑ったら、迷わず動きます。プラクティカルガイドは、疑った時点でまず行うことを順番に示しています(出典:日本麻酔科学会 局所麻酔薬中毒への対応プラクティカルガイド)。症状が軽いうちに動き出せるかどうかで、その後の経過が変わります。最初の一手は、局所麻酔薬の投与を止めて人を呼ぶことです。

投与を止めて応援を呼ぶ

最初にやることは、2つです。

局所麻酔薬の投与を中止し、応援を呼びます。持続投与をしているなら、ポンプを止めます。ひとりで抱え込まず、すぐに人を集めます。

  • 局所麻酔薬の投与を中止する
  • 持続投与のポンプを止める
  • 応援を呼ぶ

疑った段階で、人を呼んでかまいません。

呼吸と循環を保つ

次に、呼吸と循環を保ちます。

プラクティカルガイドでは、血圧計と心電図とパルスオキシメータを装着し、静脈路を確保し、気道を確保して100%酸素を投与し、必要に応じて気管挿管と人工呼吸を行うとされています。余裕があれば、血中濃度を測るための採血もしておきます(出典:日本麻酔科学会 局所麻酔薬中毒への対応プラクティカルガイド)。

  • モニターの装着
  • 静脈路の確保
  • 気道確保と100%酸素
  • 必要なら気管挿管

アシドーシスになると中毒症状が出やすくなるので、換気をしっかり保ちます。

痙攣を止める

痙攣が起きたら、止めます。

プラクティカルガイドは、痙攣の治療にベンゾジアゼピンを推奨しています。準備しておく薬の例としては、ミダゾラムやジアゼパムが挙げられています。チオペンタールやプロポフォールも使えますが、血圧や心拍が不安定なときにはプロポフォールを使ってはいけないとされています。どの薬も、少量ずつ投与します(出典:日本麻酔科学会 局所麻酔薬中毒への対応プラクティカルガイド)。

  • ベンゾジアゼピンが推奨(ミダゾラムやジアゼパムなど)
  • 循環が不安定ならプロポフォールは使わない
  • 少量ずつ投与する

痙攣を止める薬で、循環を悪化させないことが大切です。

重い低血圧や不整脈があるとき

重い低血圧や不整脈を伴う場合は、さらに踏み込みます。

プラクティカルガイドでは、脂肪乳剤を投与し、標準的な手順に従って蘇生を始め、体外循環の準備をするとされています。あわせて、不整脈の治療にリドカインを使わないこと、蘇生に長い時間がかかる場合があることにも注意が促されています(出典:日本麻酔科学会 局所麻酔薬中毒への対応プラクティカルガイド)。

  • 脂肪乳剤の投与
  • 標準的な蘇生の開始
  • 体外循環の準備

不整脈を見ても、リドカインには手を伸ばさないでください。

脂肪乳剤を使う場面

脂肪乳剤を使う場面を表すバナー画像

局所麻酔薬中毒の治療として、プラクティカルガイドは脂肪乳剤の投与を示しています。有効性のエビデンスのレベルは高くないものの、簡便で、救命できた例が多く報告されており、試みる価値はあると述べられています(出典:日本麻酔科学会 局所麻酔薬中毒への対応プラクティカルガイド)。重い低血圧や不整脈を伴うときが、脂肪乳剤の出番です。

使うのは20%脂肪乳剤

使うのは、20%の脂肪乳剤です。

プラクティカルガイドでは、20%脂肪乳剤(イントラリポス®)を施設の薬局に常備し、手術室や分娩室にも常温で置いておくこととされています(出典:日本麻酔科学会 局所麻酔薬中毒への対応プラクティカルガイド)。種類の多い薬ではないので、名前と置き場所を覚えておけば、いざというときに迷いません。

  • 濃度は20%
  • 薬局と手術室に常備
  • 常温で保存

名前と置き場所は、今日のうちに確かめておいてください。

投与量はチェックリストで確かめる

投与量は、プラクティカルガイドの末尾にあるチェックリストで確かめます。

プラクティカルガイドは、このチェックリストを手術室内に常置し、危機的な状況でも迷わず治療できるよう活用することを求めています(出典:日本麻酔科学会 局所麻酔薬中毒への対応プラクティカルガイド)。体重から計算する必要があるので、覚えておくより、すぐ見られる場所に置いておくほうが確実です。

投与量を暗記するより、チェックリストを手術室に置いておくことのほうが大切です。

プロポフォールで代わりにしない

1つ、間違えやすい点があります。

プロポフォールの溶媒も脂肪乳剤ですが、その濃度は10%と低く、治療に必要な量の脂肪を投与しようとすると、プロポフォールそのものを大量に投与することになってしまいます。その結果、プロポフォールの心抑制作用で血圧が下がり、循環がかえって悪くなるのです。プラクティカルガイドは、脂肪乳剤による治療の代わりにプロポフォールを使ってはならないとしています(出典:日本麻酔科学会 局所麻酔薬中毒への対応プラクティカルガイド)。

手元にあるからといって、プロポフォールで代わりにしてはいけません。

局所麻酔薬中毒に関するよくある質問

局所麻酔薬中毒に関するよくある質問を表すバナー画像

研修医からよく出る質問をまとめました。実際の対応は、自分の施設の手順とプラクティカルガイドのチェックリストに従ってください。迷ったときは、投与を止めて人を呼ぶことから始めます。

どのくらいの頻度で起こりますか

プラクティカルガイドによると、約1万例に1例から500例に1例と幅があります。硬膜外麻酔では1万例あたり1.2〜11例、末梢神経ブロックではおよそ1万例あたり2.5例と報告されています(出典:日本麻酔科学会 局所麻酔薬中毒への対応プラクティカルガイド)。まれですが、起こりうるものとして準備しておきます。

吸引で血液が引けなければ安全ですか

安全とはいえません。プラクティカルガイドは、吸引で血液が引けなくても血管内投与は起こりうるとしています。引けなかったときも、少しずつ投与して様子を見ます。

似た症状を起こすものはありますか

プラクティカルガイドは、アドレナリンなど血管収縮薬への反応、迷走神経反射、アナフィラキシー、高位の脊髄くも膜下麻酔や硬膜外麻酔、鎮静薬の影響などを見分ける対象に挙げています(出典:日本麻酔科学会 局所麻酔薬中毒への対応プラクティカルガイド)。脊髄くも膜下麻酔の範囲が上がる場合は【脊髄くも膜下麻酔とは】硬膜外麻酔と何がどう違うのか、アナフィラキシーは【周術期アナフィラキシーの対応】研修医が押さえる気づき方と初期治療で詳しく扱っています。投与した量や手技と、症状の出方を合わせて見分けます。

全身麻酔中の神経ブロックで気をつけることは

患者が症状を訴えられないことです。先駆症状が出ないまま循環の症状が出ることもあります。少しずつ投与しながら、心電図と血圧の変化を見続けてください。

症状がおさまったらすぐに帰室してよいですか

プラクティカルガイドは、患者を監視とすぐの治療ができる場所に移し、観察を続けるよう求めています(出典:日本麻酔科学会 局所麻酔薬中毒への対応プラクティカルガイド)。遅れて症状が出ることもあります。落ち着いても、しばらくは監視できる場所で観察します。

研修医がまず覚えることは何ですか

口のまわりのしびれが最初のサインになりうること、疑ったら投与を止めて人を呼ぶこと、そして脂肪乳剤の置き場所です。この3つを知っているだけで、最初の数分の動きが変わります。

まとめ 局所麻酔薬中毒の対応

局所麻酔薬中毒の対応のまとめを表すバナー画像

局所麻酔薬中毒は、局所麻酔薬を使うかぎりどこでも起こりうる合併症です。量を減らし、少しずつ投与し、吸引できるときは吸引してから投与します。それでも血管内投与の可能性は残るので、起きたときの準備をしておきます。疑ったら投与を止めて応援を呼び、呼吸と循環を保ち、重いときは脂肪乳剤を使います。

この記事の振り返り
  • 局所麻酔薬を使うかぎり起こりうる
  • 吸引しても血管内投与は防ぎきれない
  • 口のまわりのしびれは最初のサイン
  • 全身麻酔中は心電図と血圧が頼り
  • 脂肪乳剤の置き場所を知っておく

次に局所麻酔薬を投与するときは、脂肪乳剤がどこにあるかを先に確かめてみてください。それだけで、いざというときの動きが変わります。

当ブログでは、麻酔科の現場で実際に行われていることを現役麻酔科医の視点で発信しています。硬膜外麻酔の仕組みは【硬膜外麻酔とは】全身麻酔があるのになぜ併用するのかに、神経ブロックを含む術後鎮痛は【術後鎮痛の方法】研修医が迷う決め方と組み合わせの考え方にまとめました。心停止に至ったときの動き方は【術中心停止の対応】研修医が押さえる止まる前のサインと最初の1分で解説しています。疑問があればコメント欄で聞かせてください。

この記事で参考にした資料

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