「術前診察に行ってきて」と言われたものの、カルテのどこを見ればいいのか分からないまま病棟へ向かった経験はありませんか。
- カルテのどこを見るか
- 問診で必ず聞く項目
- 追加検査を出す基準
- 上級医への報告の仕方
術前評価は、情報をかき集める作業ではありません。当日の麻酔をどう安全に進めるかを決めるための、設計図づくりです。見る場所と順番が決まれば、診察にかかる時間は驚くほど短くなります。

術前診察のとき、何から聞けばいいのか毎回迷ってしまいます。

聞く順番を先に決めてしまうと迷いません。見る場所は、実はそれほど多くないですよ。
この記事では、麻酔科医が術前評価で実際に見ている項目を、診察の流れに沿って整理します。問診から気道評価、臓器別のリスク、検査の読み方、そして集めた情報を麻酔計画に落とし込むところまで。前日までに何を終えておくべきかが分かる構成にしました。
麻酔科医が術前評価を行う理由

術前評価は、麻酔科医が患者に会う最初の場面です。目的は大きく3つあり、リスクを予測すること、麻酔の計画を立てること、患者に説明して同意を得ることになります。この3つが揃って初めて、当日の麻酔を安全に始められます。どれか1つでも欠けたまま手術室に入ると、その場で慌てることになりかねません。まずは、それぞれの目的から見ていきましょう。
手術と麻酔のリスク予測
最初の目的は、この患者に麻酔をかけたとき何が起こりうるかを予測することです。
同じ手術でも、患者の状態によって起こることは変わります。心機能が落ちていれば血圧が下がりやすく、肺に問題があれば酸素化を保ちにくくなります。予測できていれば、あらかじめ手を打っておけます。
- 起こりやすい合併症の想定
- 必要になる薬剤と器具
- 術後の管理場所の検討
予測できていなかった事態こそが、麻酔で最も危険な状況です。
麻酔方法を決める材料
2つ目の目的は、どの麻酔方法を選ぶかを決めることです。
全身麻酔だけでいくのか、区域麻酔を併用するのか。気道をどう確保するのか。モニターを追加するのか。これらはすべて、術前評価で得た情報から決まります。
当日になって初めて考えることがないよう、前日までに筋道を立てておきます。
患者への説明と同意の場
3つ目は、患者に麻酔の内容を説明し、同意を得ることです。
施設によっては、この説明と同意を術前外来の段階で終えていることもあります。その場合でも、当日を担当する麻酔科医が自分で情報を取り直し、麻酔計画を組み立てる必要があります。
- 麻酔方法と当日の流れ
- 起こりうる合併症
- 術後の痛みへの対応
不安の強い人には、眠っている間に何が行われるのか、目覚めたときにどんな状態でいるのかを具体的に伝えると落ち着いてもらえます。会話の途中で、カルテに書かれていない既往が出てくることも珍しくありません。説明する合併症の内容は【全身麻酔の合併症】研修医が術前説明で押さえる頻度と対策にまとめました。
説明と同意がすでに済んでいる患者でも、前日に顔を見に行く意味は変わりません。実際に会って話してみて初めて分かることもあります。
前日までに終える意味
術前評価は、手術当日ではなく前日までに終えておくのが原則です。
追加の検査が要ることもあれば、内服薬の調整が必要になることもあります。上級医と相談すべき点が見つかる場合もあるでしょう。当日の朝では、そのどれにも対応する時間が残っていません。
当日の朝にカルテで見るのは、発熱や急な状態の変化といった前日からの変わり目だけで済むのが理想です。
術前評価で押さえる問診のポイント

問診は術前評価の土台です。カルテを読むだけでは分からない情報が、患者との会話からいくらでも出てきます。とはいえ、思いつくままに聞いていては時間が足りません。聞く項目をあらかじめ決めておくことが、短時間で漏れなく拾うコツです。ここでは、麻酔科医が必ず確認している項目を順に挙げていきます。どれも、当日の管理に直結する内容ばかりです。
既往歴と現在の内服薬
最初に確認するのは、既往歴と現在飲んでいる薬です。
既往歴は、麻酔中に何が起こりうるかを教えてくれます。内服薬は、そのまま続けるものと術前に止めるものに分かれます。抗血栓薬や糖尿病の薬のように、患者ごとに判断が要るものもあります。
- 心疾患と脳血管疾患
- 呼吸器疾患と喫煙歴
- 糖尿病と腎機能
- 抗血栓薬の使用状況
休薬が必要な薬は、薬剤ごとに期間が決まっています。具体的な日数は施設の基準やガイドラインを必ず確認してください。記憶だけで判断してよい部分ではありません。
過去の麻酔歴と家族歴
過去に麻酔を受けたことがあるかどうかは、必ず聞きます。
前回困ったことがあれば、今回も同じことが起こる可能性が高いからです。挿管に難渋した、目覚めが悪かった、ひどく吐いた。どれも当日の準備を変える情報になります。
同じ施設で過去に手術を受けているなら、そのときの麻酔記録が残っている可能性があります。マスク換気が難しかった、気管挿管に手間取ったといった記載が見つかることもあります。患者本人からは引き出せない情報が眠っているかもしれません。
- マスク換気と挿管の困難
- 術後の強い悪心と嘔吐
- 覚醒が遅れた経験
- 家族の麻酔での異常
家族歴で特に大事なのが悪性高熱症です。血縁者に麻酔で高熱が出た人がいないかは、意識して聞いてください。問診で聞く項目は【悪性高熱症の対応】体温より先に見るサインと最初にやることにまとめています。
アレルギーと生活歴
アレルギーは、薬剤だけでなく食物やラテックスまで確認します。
食物アレルギーが麻酔薬の選択に関わることがあります。ラテックスアレルギーがあれば、手袋や器材の準備そのものを変える必要が出てきます。どちらも、手術室に入る前に分かっていなければ意味がありません。
- 薬剤アレルギーの有無
- 食物とラテックス
- 喫煙の本数と期間
生活歴では喫煙について聞きます。本数だけでなく、いつまで吸っていたかも確認します。
運動耐容能の聞き方
検査の数字だけでは分からない全身の予備能を知るために、日常生活での活動量を聞きます。
平地を問題なく歩けるか、階段を何階まで上がれるか、途中で息が切れないか。この答えは、心臓と肺にどれだけ余力が残っているかの目安になります。特別な検査をしなくても、会話だけで拾える情報です。
- 平地歩行での息切れ
- 階段昇降の可否
- 日常動作での制限
階段を上れる人と、少し動くだけで息が切れる人では、麻酔中に起こることが違います。数字に表れない情報として重視しています。
気道評価で確認するポイント

気道評価は、麻酔科医が最も神経を使う部分です。全身麻酔では、患者の呼吸を私たちが引き受けることになります。気道が確保できないことは、麻酔で最も避けたい事態です。だからこそ、前日のうちに難しさを予測しておきます。診察室でできる確認は限られていますが、その限られた所見をどう組み合わせるかが鍵になります。
開口度と頸部の可動域
口がどれだけ開くか、首がどれだけ反るか。この2つは必ず見ます。
喉頭鏡を入れるには口が十分に開く必要があり、声門を見るには首を伸ばした姿勢が要ります。関節リウマチや頸椎の手術後では、可動域が制限されていることがあります。
- 開口の大きさ
- 頸部の後屈の程度
- 頸椎の手術歴
どちらかが制限されていれば、通常どおりの挿管は難しくなると考えます。
マランパチ (Mallampati) 分類と歯の状態
口を大きく開けてもらい、のどの奥がどこまで見えるかを段階に分けたものがマランパチ分類です。
奥まで見えるほど挿管しやすく、舌に隠れて見えないほど難しくなる傾向があります。ただしこれ単独で決まるものではなく、他の所見と組み合わせて判断します。
- 咽頭後壁の見え方
- 動揺している歯の有無
- 差し歯と義歯の位置
歯の状態も同じ場面で確認します。動揺している歯や差し歯があると、気管挿管のときに歯を傷つけたり抜けたりする可能性が高くなります。その点を術前に記録し、患者本人にも説明しておきます。
挿管困難を疑う所見
挿管が難しいかどうかは、1つの所見だけでは決まりません。
いくつかの所見が重なったときに、難しさが跳ね上がります。肥満、短く太い首、小さい下顎、前歯の突出。こうした特徴が複数あれば、警戒の度合いを上げます。
睡眠時無呼吸がある人も要注意です。気管挿管だけでなく、マスク換気の段階から難渋することが予想されます。
- 肥満と短い頸部
- 下顎の後退
- 開口の制限
- 睡眠時無呼吸の有無
- 過去の挿管困難
最も確実な情報は、過去に挿管困難だったという記録です。同じ施設で参照できるなら、前回の麻酔記録に目を通しておきましょう。
困難が予想されるときの備え
難しそうだと分かった時点で、当日の段取りを変えます。
ビデオ喉頭鏡を準備する、人を多めに集める、意識下挿管を検討する。選択肢はいくつもありますが、いずれも前日に決めておくから実行できるものばかりです。当日の手技そのものは【気管挿管のコツ】声門が見えないときに見直す順番で解説しています。
- ビデオ喉頭鏡の準備
- 応援を呼ぶ段取り
- 意識下挿管の検討
- 外科医との事前共有
当日の手術室で初めて気づくことが、最も避けたい展開です。前日の評価は、この事態を防ぐためにあります。
臓器別に見る術前評価のポイント

問診と気道評価が終わったら、臓器ごとに状態を整理します。すべての臓器を同じ深さで診る必要はありません。手術侵襲と麻酔がどの臓器に負担をかけるのかを考えて、重みをつけていきます。ここでは、麻酔科医が特に注意して見ている臓器を順に挙げます。どれも当日の管理方法に直結する項目ばかりです。
循環器のリスク評価
循環器の評価は、術前評価の中心と言ってよい部分です。
麻酔薬は血管を拡張させ、手術侵襲は血圧を上昇させます。この両方の変化に耐えられる余力があるかを見ます。狭心症や心筋梗塞の既往、不整脈、弁膜症、心不全の症状が主な確認項目になります。
- 胸痛と息切れの有無
- 不整脈と弁膜症
- 心不全の既往
- 降圧薬や利尿薬の内服
- 抗不整脈薬と抗血栓薬
最近になって症状が悪化している場合は、手術の前に循環器内科へ相談します。
呼吸器のリスク評価
呼吸器では、換気と酸素化をどれだけ保てるかを見ます。喫煙は痰の量と術後合併症の両方に影響するため、本数と期間もあわせて確認します。
喘息では、気管挿管の刺激が発作の引き金になることが懸念されます。最後に発作が起きたのはいつか、普段どんな吸入薬や内服薬を使っているかを確認しておきましょう。
慢性閉塞性肺疾患では、息を吐き出すのに時間がかかるため、換気のしかたそのものを考える必要が出てきます。長く喫煙を続けてきた人では、肺の状態そのものを疑ってかかります。
- 喘息の最終発作と吸入薬
- 慢性閉塞性肺疾患の程度
- 喫煙の状況
呼吸機能が著しく悪い場合は、全身麻酔以外の選択肢も検討します。抜管できなくなる懸念があるなら、区域麻酔を主体に組み立てる方法もあります。詳しくは【硬膜外麻酔とは】全身麻酔があるのになぜ併用するのかにまとめました。
腎機能と肝機能の確認
腎機能と肝機能は、薬の効き方と持続時間を左右します。
多くの麻酔薬は肝臓で代謝され、腎臓から排泄されます。機能が落ちていれば、同じ量を使っても効果が長く残ります。
- 腎機能の指標と透析の有無
- 肝障害の程度
- 出血傾向の有無
- 電解質の異常
いつもの量では効果が長く残るため、投与する量そのものを減らす判断が必要になることもあります。
糖尿病と内分泌の管理
糖尿病では、血糖のコントロール状況と合併症の両方を見ます。
血糖は高すぎても低すぎても問題になりますが、麻酔中の患者は症状を訴えられません。神経障害や腎障害、血管の状態といった合併症も、麻酔管理のしかたに影響してきます。
- 血糖コントロールの状況
- 糖尿病の合併症
- 甲状腺機能の異常
- ステロイドの内服歴
長期にステロイドを飲んでいる人では、手術侵襲に対する体の反応が不足する可能性があります。
術前検査の見方と追加判断

検査結果は、問診と診察で得た印象を裏づけるために見ます。逆に言えば、検査の数字だけを見て患者を評価することはありません。値が正常でも状態の悪い人はいますし、その逆もあります。ここでは、麻酔科医がどの検査のどこを見ているのか、そして追加の検査が要ると判断するのはどんなときかを整理します。
血液検査で見る項目
血液検査では、まず貧血と凝固、腎機能と電解質を見ます。
貧血があれば、出血に耐えられる余裕がその分だけ減ります。凝固の異常は、区域麻酔を選べるかどうかに直結します。腎機能は、薬の効き方や選択に関わってきます。
- 血色素量と血小板数
- 凝固機能
- 腎機能と電解質
- 血糖と肝機能
凝固の異常は、硬膜外麻酔や脊髄くも膜下麻酔を避ける理由になります。区域麻酔を予定しているなら必ず確認してください。
心電図と胸部エックス線
心電図では、不整脈と虚血を示す変化、伝導障害を確認します。
過去の心電図があれば必ず比べます。その変化がいつからあるものなのか分かると、緊急性の判断がしやすくなるからです。胸部エックス線では、心陰影の大きさや肺の病変、気管の走行を見ます。
- 不整脈と期外収縮
- 虚血を示す変化
- 心陰影の大きさ
- 気管の偏位の有無
気管が腫瘍などで押されている所見は、挿管の難しさに直結します。
心エコーと呼吸機能検査
心エコーと呼吸機能検査は、施設によっては全例でルーチンに行われていることもありますが、ガイドライン上は全員に必要な検査ではありません。
問診や基本的な検査で気になる点が出てきたときに、追加で依頼します。心エコーでは心臓の収縮能と弁の状態が、呼吸機能検査では換気障害の型と程度が分かります。
- 左室の収縮能
- 弁膜症の重症度
- 拘束性と閉塞性の判別
- 予備能の数値化
他の検査や身体診察から必要だと判断したときに、追加の検査を依頼しましょう。
追加検査を依頼する判断
追加の検査は、多ければよいというものではありません。
患者の負担が増えますし、結果を待つあいだに手術が延期になることもあります。それでも必要だと判断するのは、結果によって麻酔方法や管理方法が変わるときです。
迷ったときは、依頼する前に上級医へ相談します。判断に迷う症例ほど、早い段階で相談したほうが結果的に早く進みます。
術前評価と麻酔計画のつなげ方

ここまで集めた情報を、麻酔計画という形に変えていきます。術前評価で最も差がつくのが、この部分です。情報を並べただけでは、当日の役には立ちません。どの麻酔方法を選び、どんなモニターをつけ、何に備えておくのか。具体的な形になって初めて、術前評価は完成したと言えます。術式と患者の問題点から計画を組み立てる手順は、【麻酔計画の立て方】術式から考えて患者に合わせる研修医の手順で、症例を例に解説しました。
ASA分類での全身状態の整理
集めた情報は、ASA分類という形で一度まとめます。
全身状態を段階で表す分類で、世界共通の物差しとして使われています。手術のリスクを他の医療者と共有するときに、共通言語のような役割を果たしてくれます。
- 全身状態の段階づけ
- 他職種との情報共有
- 術後管理の見通し
分類そのものより、なぜその段階だと考えたのかを説明できることが大事です。
麻酔方法とモニターの選択
全身状態が整理できたら、麻酔方法を決めていきます。
全身麻酔だけでいくのか、硬膜外麻酔や神経ブロックを併用するのか。区域麻酔を主体にする選択肢もあります。手術の部位と予定時間、術後の痛みの強さ、患者の状態を並べて組み立てます。
- 気道確保の方法
- 区域麻酔の併用
- 追加するモニター
- 輸液と輸血の準備
標準的なモニターに加えて、動脈圧ラインや中心静脈カテーテルを足すかどうかもここで決めます。当日に慌てて準備することがないよう、前日のうちに決めておきます。区域麻酔の選び方は【脊髄くも膜下麻酔とは】硬膜外麻酔と何がどう違うのかも参考になります。
手術延期を考える状況
術前評価の結果、手術を延期したほうがよいと判断することもあります。
治療中の感染症、コントロールできていない心不全、最近起きた心血管イベント。こうした状態では、待つことで安全性が大きく上がります。ただし、待つことによる不利益とのバランスで決まります。
- 発熱と感染徴候
- 循環動態の不安定さ
- 最近の心血管イベント
- 必要な検査の未実施
延期の判断は、外科医と相談したうえで決めるものです。研修医が一人で結論を出す場面ではありません。
上級医への相談の仕方
迷った症例は、必ず上級医に相談します。
そのとき、集めた情報を並べるだけで終わらせないでください。この患者はこういう状態で、自分はこの方法がよいと考えたが、この点が不安だ。この形で伝えると、議論が一気に進みます。
- 患者の全身状態の要約
- 自分が考えた麻酔計画
- 迷っている具体的な点
相談も前日までに終えておくのが理想です。当日の朝では、方針を変える時間が残っていません。
術前評価のよくある質問

術前評価について、研修医からよく受ける質問をまとめました。どれも現場で実際に迷いやすい部分です。答えが1つに決まらない質問も多く、施設によって運用が違う点もあります。ここでは考え方の軸を示しますので、実際の運用は自分の施設の基準をあわせて確認してください。
術前評価にかける時間の目安
患者の状態によって変わりますが、全身状態が安定している人なら短時間で終わります。合併症が多い人や、追加の検討が要る人には時間をかけます。大事なのは時間の長さではなく、聞くべき項目を漏らさないことです。慣れてくると、順番が決まっている分だけ自然と速くなります。
絶飲食の指示を出す理由
麻酔で意識がなくなると、胃の内容物が逆流して肺に入る危険が生じます。これを誤嚥といい、重い肺炎につながることがあります。絶飲食は、この誤嚥を防ぐための準備です。時間の基準は飲食物の種類によって異なり、施設ごとの取り決めもあるため必ず確認してください。時間の目安と守れなかったときの判断は、【術前絶飲食】研修医が押さえる時間の目安と守れなかったときの判断にまとめました。
内服薬の継続と中止の考え方
薬ごとに、続けたほうがよいものと止めたほうがよいものがあります。降圧薬や気管支拡張薬のように、止めることで状態が悪くなる薬は基本的に継続します。抗血栓薬のように出血と血栓のリスクを天秤にかける薬は、患者ごとの判断になります。休薬期間は薬剤ごとに決まっているので、施設の基準を確認したうえで指示を出してください。
小児の術前評価で違う点
小児では本人から病歴を聞けないため、保護者からの情報が中心になります。体重あたりで薬の量を計算するので、正確な体重の把握が欠かせません。直前の感冒症状は、気道の過敏性を高めるため特に重要な確認項目です。保護者の不安にどう答えるかも、術前評価の一部と考えてください。
緊急手術での術前評価
緊急手術では、前日までにという前提が成り立ちません。限られた時間のなかで、致命的になりうる項目を優先して確認していきます。救急の現場で使われるAMPLEの項目に沿って聞くと、短時間でも漏れにくくなります。アレルギー、内服薬、既往歴と妊娠の有無、最後に飲食した時刻、そして発症や受傷の経緯。気道と循環の評価は、これと並行して進めます。
他職種と共有すべき情報
術前評価で得た情報は、麻酔科の中だけで抱えていても意味がありません。挿管困難の可能性、出血のリスク、術後の管理場所。これらは手術室の看護師や外科医、病棟とも共有します。危険が予想される情報ほど、早く広く伝える必要があります。カンファレンスや申し送りの場を活用してください。
まとめ 術前評価のポイント

術前評価は、情報をかき集める作業ではなく、当日の麻酔を設計する作業です。問診から気道評価、臓器別のリスク、検査の確認までを一連の流れとして身につけてしまえば、術前の準備で迷うことは大きく減ります。
- 前日までに終える術前診察
- 順番を決めた問診の進め方
- 所見を重ねて見る気道評価
- 計画を変えるための検査
- 麻酔計画への落とし込み
明日の術前診察から、見る順番を固定してみてください。順番が決まるだけで、抜け落ちは驚くほど減ります。
当ブログでは、麻酔科の現場で実際に行われていることを現役麻酔科医の視点で発信しています。麻酔科研修の全体像は【麻酔科研修医のホントのところ】ローテ前の準備と評価される動き方に、全身麻酔の仕組みは【全身麻酔の3要素】1つ欠けると何が起きるのかを現役医師が解説にまとめました。疑問があればコメント欄で聞かせてください。


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